先日とある番組でJAlのA350の紹介で
最近の航空機は操縦かんがなくなって進化したので
サイドスティックになったというようなお話がありましたが
そうではないということでマニア的な見地でお知らせいたしたいと思います
1. 「エアバス=サイドスティック」の歴史
エアバスは1980年代に登場したA320から、
いち早く「フライ・バイ・ワイヤ(電気信号による操縦)」を本格採用し、
サイドスティックを導入しました。
メリット: 操縦席が広く使える、正面のテーブルが引き出せる、計器が見やすい。
考え方: 「人間はミスをするもの」という前提のもと、
コンピュータが最終的に機体を保護する(フライトエンベロープ保護)
という思想が強いです。
2. 「ボーイング=操縦桿(コントロール・ホイール)」の継続
ボーイングも最新鋭の787や777Xなど、
中身は超ハイテクな「フライ・バイ・ワイヤ」機です。
しかし、あえて昔ながらの大きな操縦桿を残しています。
理由: 「最後に機体をコントロールするのはパイロットである」という思想。
連動性: ボーイングの操縦桿は、
機長席と副操縦席が物理的に連動して動きます。
相手がどう操作しているか「感触」で伝わることを重視しています
(エアバスのスティックは連動しません)。
3. 設計思想の決定的な違い
以下の表にまとめると、その違いがはっきりします。
項目 エアバス (Airbus) ボーイング (Boeing) 操縦装置 サイドスティック 操縦桿(ヨーク) 優先順位 コンピュータによる制御を重視 パイロットの判断・操作を重視 コックピット デスクワークのような快適性 伝統的な操作感の継承 自動スロットル レバーは動かない(設定値のみ) レバーが自動で前後に動く JALでは、以下のように機材が分かれています。
路線 機種 操縦タイプ 国内線・国際線主力 A350 (Airbus) サイドスティック / テーブルあり 国際線主力・中型機 787 / 777 (Boeing) 操縦桿 / 連動するレバー 小型機(地方路線など) 737 (Boeing) 操縦桿 / 伝統的な操作感 「操縦の限界」を決めるのは誰か?
ここが「設計思想」の核心部分です。
エアバス(コンピュータが守る): サイドスティックをどれだけ強く倒しても、
機体が壊れたり失速したりするような無理な角度には
コンピュータが自動で制限をかけ、絶対に曲がらせません。
これを「ハード・プロテクション」と呼びます。
ボーイング(人間が最後を決める): 無理な操作をしようとすると、
操縦桿が重くなるなどの「警告」は出しますが、
パイロットが渾身の力で操作すれば、
コンピュータの制限をオーバーライド(上書き)できます。
「最後は人間が責任を持つ」というスタンスです。
3. コックピットの「居住性」と「テーブル」
実務上の大きな違いは、機長・副操縦士の目の前にある空間です。
エアバス(デスクスタイル): 操縦桿がないため、
目の前に引き出し式のテーブルがあります。食事をしたり、
マニュアルを確認したり、キーボードを操作したりするのに非常に便利で、
パイロットからは「一度これに慣れると戻れない」と言われることもあります。
ボーイング(操縦席スタイル): 目の前に大きな操縦桿があるため、
テーブルは横から引き出すタイプなどが主流です。
常に「操縦装置」が目の前にあることで、伝統的な航空機の安心感があります。

0 件のコメント:
コメントを投稿