マイル修行は悪なのか?
沖縄離島路線問題を航空経営の視点から考える
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近年、いわゆる「マイル修行」と呼ばれる行動が注目を集めている。
航空会社の上級会員資格を得るために、短期間で多くの搭乗回数を重ねる行為だ。
一部報道では、沖縄の離島路線で修行目的の利用者が増え、
島民が通院や生活移動で航空機に乗れない事例が紹介された。
本当にこれは「修行者の問題」なのだろうか。
本稿では、感情論ではなく航空経営と公共交通の構造から整理してみたい。
1. マイル修行とは何か
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マイル修行とは、航空会社の上級会員資格(ステータス)を取得するため、
搭乗回数やポイントを効率的に積み上げる行動を指す。
特に地方路線や離島路線は、
比較的運賃が安い
搭乗距離・回数を稼ぎやすい
便数が多い区間もある
といった理由から選ばれることがある。
利用者は正規運賃を支払っているため、航空会社にとっては通常の顧客と変わらない。
2. 離島路線の特殊性
沖縄の離島路線は単なる観光路線ではない。
通院
進学
行政手続き
生活物資の流通
といった生活インフラとしての役割を持つ。
鉄道も高速道路もない島にとって、航空機は実質的な「命綱」だ。
一方で、航空会社は民間企業である。
採算が取れなければ路線は維持できない。
ここに構造的な緊張関係が生まれる。
3. 航空会社側の論理
航空会社にとって重要なのは「搭乗率」である。
空席があるよりは、修行目的であっても座席が埋まる方が収益は安定する。
実際、離島路線の多くは自治体補助や国の支援制度によって支えられている。
つまり、完全な市場原理でも、完全な公共交通でもない“中間的な存在”だ。
修行者の搭乗そのものが直ちに違法・不当というわけではない。
4. 島民側の論理
一方で、島民にとっては事情が異なる。
急な通院
悪天候による欠航
便数の少なさ
小型機による座席数の制約
といった条件下では、満席は生活リスクにつながる。
「観光もせずに往復するだけの利用」に違和感を持つ声が出るのも理解できる。
しかしこれは個人のモラル問題というより、制度設計の問題である可能性が高い。
5. 本質的な問題は何か
この問題の核心は、
民間企業としての航空会社と
公共インフラとしての離島路線
という二重構造にある。
もし本当に生活利用が逼迫しているなら、
島民優先座席の設定
医療利用枠の確保
補助制度の再設計
需要に応じた機材大型化
といった政策的対応が議論されるべきだろう。
修行者を責めるだけでは根本解決にならない。
6. 航空ビジネス全体への示唆
航空会社は近年、マイル制度や会員制度によって顧客囲い込みを強化している。
修行文化はその延長線上にあるとも言える。
つまり、
企業戦略
公共交通政策
地域社会の実情
が交差した結果として起きている現象なのだ。
7. 結論:対立ではなく設計の問題
マイル修行者は合法的な顧客である。
島民は生活を支える利用者である。
どちらが正しいか、という単純な話ではない。
重要なのは、離島航空を「どの程度公共インフラとして扱うのか」
という社会的合意だろう。
感情的な対立ではなく、
航空政策・補助制度・座席管理の設計として議論されるべきテーマである。
