自民党総裁選の勝者が総理になれない!?
過半数割れ政局の舞台裏
2025年9月、政界に衝撃が走っています。
石破総理の退陣表明を受け、
次期リーダーを決める自民党総裁選が開催されています。
メディアでは候補者の政策論争が過熱し、
国民の関心も高まっています。
しかし、今回の総裁選には、前回までの総裁選とは決定的に異なる、
非常に重要な前提があります。
それは、現在の自民党が国会で過半数を割っているという事実です。
この状況は、たとえ自民党総裁選で勝利したとしても、
その候補者がスムーズに内閣総理大臣に就任できるわけではないという、
極めて厳しい現実を突きつけています。一体どういうことなのでしょうか?
自民党総裁選の有権者は「党内」でも、総理決定は「国会」
まずは基本を確認しましょう。
自民党総裁選の選挙権を持つのは、
自民党に所属する国会議員と党員のみです。
彼らが自民党の代表、つまり「党首」を選出します。
しかし、党首がそのまま内閣総理大臣になるためには、
国会での指名選挙を経る必要があります。
日本の憲法は、内閣総理大臣を国会議員の中から国会の議決で指名する
**「国会中心主義」**を採用しています(憲法第67条)。
これまでの多くのケースでは、自民党が衆議院で過半数を占めていたため、
自民党総裁が国会の指名選挙で選ばれることは「当然の流れ」でした。
自民党が多数派であれば、党総裁に党所属議員が投票するだけで、
難なく総理大臣になれたのです。
過半数割れの現実:総裁は選べても、総理になれない!?
現在の国会で自民党が過半数を割っている状況では、
この「当然の流れ」が機能しません。
自民党総裁選で新しい総裁が誕生したとしても、
その人物が国会で内閣総理大臣に指名されるためには、
野党からの協力(支持・票)が不可欠となります。
これは、総裁選の勝者が、勝利の喜びも束の間、
すぐに野党との厳しい交渉に臨まなければならないことを意味します。
具体的には、以下のようなシナリオが考えられます。
連立政権の樹立:
総裁選後、新総裁が野党の特定の政党と連立政権を組むことで、
過半数を確保し、総理指名を受ける。
この場合、組閣において野党に閣僚ポストを分け与えるなど、
大きな譲歩が必要となります。
閣外協力:
野党が連立には加わらず、特定の政策合意に基づいて総理指名に協力し、
政府の政策の一部を支持する形。
これもまた、政策面での大幅な擦り合わせが必要となります。
少数与党政権:
連立や閣外協力が得られない場合、
自民党単独の少数与党政権となる可能性もゼロではありません。
しかし、この場合、法案の成立などが極めて困難になり、
政権運営は不安定を極めます。
自民党総裁選の「勝者」が直面する現実
この状況は、自民党総裁選の様相を大きく変えることになります。
単に党内で多数派工作を制するだけでなく、
**「いかに野党の協力を得られるか」
「連立を組める可能性があるか」**といった視点が、
候補者選びの重要な要素となるでしょう。
野党やコメンテーターが総裁選に注目し、議論を繰り広げるのは、
単に自民党の動向に口出しをしているのではなく、
「次期総理が誰になるか」「どんな政権が誕生するか」が、
国の舵取りに直結するからです。
過半数割れという状況は、総裁選の候補者選定からその後の政権運営まで、
すべてに深い影響を与えるのです。
石破総理退陣後の自民党総裁選は、党内のリーダーを選ぶだけでなく、
日本の政治の未来を大きく左右する、かつてないほど複雑で重要な選挙と言えるでしょう。